具体と抽象の間で成長していくということ

「具体」と「抽象」を往復することで人は成長していく。

「具体化」された行動を繰り返す中で共通項と差分を分け「抽象化」されることで「気付き」となる。
その「気付き」が次の行動のレベルを引き上げる、つまり成長に繋がる。
少し言葉を変えれば、具体的な事実から「帰納法」的に法則を導き出し、別の事象に対しても「演繹法」的に当てはめていくことの繰り返しで成長していくということ。

例えば運動神経が良い人はどんなスポーツも飲み込みが早いけど、それは様々な具体的な運動から体の動かし方のコツの共通点を自然と見出して(抽象化して)いるからだ。
より具体的な例で言えば、野球のスイングがうまい人がゴルフのスイングの飲み込みが早いのは、スイングという共通項からそのコツを掴むのが早いというのもあるだろう。

ダ・ヴィンチが全ての物事を同じに見ていたのではという話があったが、そのエピソードはまさに具体と抽象の行き来を表していると思う。

『モナ・リザ』を描いて芸術家として有名なレオナルド・ダ・ヴィンチは、音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、光学、力学、土木工学など様々な分野で類い稀な才能を発揮し、あまりにも何でもできるので「万能人」と呼ばれていました。
ただ、私は彼が多才であったという点では違う考え方を持っています。
それは、ダ・ヴィンチには「全て同じものに見えていたのではないか」という仮説です。
(中略)
つまり、彼はこの世界の全てを理解するという「1つ」のことに長けた天才だったのではないかという予想です。
彼は著書の中でこんな言葉を残しています。
「私の芸術を真に理解できるのは数学者だけである」
私たちからすれば全く関係ないように思える「芸術」と「数学」を、彼は同じものと捉えていたのかもしれません。

引用元:『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』/佐藤航陽

ダ・ヴィンチは「具体的」な様々なカテゴリーの物事に触れながらも、それらを高度な「抽象化」力で同じに見ることができた。
色々な物事に対して「具体」と「抽象」のサイクルを著しく多くこなしていたことが、凡人には見えない視座を生み出す根源になっていたのだろう。

ではこの「具体」と「抽象」のレベルを上げていくのはどうすればよいのだろう。

最近プロゲーマーの動画を見ることが多いのだけど、彼らに共通しているなと思ったのが、「これまで経験していたゲームから既視感を感じる力が高い」という点と「アクションを毎回変えながら得られるフィードバックに多様性を出している」という点だ。

前者はわかりやすいと思うが、同ジャンルのゲームを多くこなしているプロだからこそ、共通項を掴むのが早いという話だ。
同一カテゴリーの多くのゲームをした具体的な経験から、抽象化された勝ちパターンを感じ取る力が早いということ。
これは当然といったら当然の話だ。

自分が「あっ」と思ったのは後者の「アクションを毎回変えながら得られるフィードバックに多様性を出している」という点だ。
常に安定して勝っているプレーヤーほど、テンプレート化された行動をしていないように見えるのだ。
これは競争相手に読まれにくくなるという表面的なメリット以上のものをもたらしていると思う。
彼らは毎回違ったプレイをすることで、得ているフィードバックが他のプレイヤーよりも多いのだ。
つまり違うアクションを行うことで得られるフィードバックに多様性がうまれ、その先にある抽象度のレベルを引き上げているのだ。

普通の人から見たら異なると思えるものに対して共通項を見出すことができるのは、高い抽象能力が必要だ。
しかしその抽象化のプロセスの前には、より多様なフィードバックを得ている必要がある。
この多様なフィードバックを得にいくためにアクションを変えていくという行為が具体と抽象のレベルを引き上げていくのに大切なプロセスなのではないだろうか

ひとつのことに対して遮二無二なって取り組むこともある程度までは成長するかもしれないけど、その成長が鈍化してきたときは得られるフィードバックを変えられるように違うアクションをとっていく。
マンネリ化してみたときにアクションを変えても、もしかしたら結果は悪くなるかもしれない。
けれども得られるフィードバックが変わるということ自体が後の抽象化フェーズに役立ち、中長期的に考えたら資産になるのだ。

抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」といえます。文字どおり、「特徴を抽出する」ということです。要は、さまざまな特徴や属性を持つ現実の事象のなかから、他のものと共通の特徴を抜き出して、ひとまとめにして扱うということです。

引用元:『具体と抽象』 / 細谷 功

この「特徴を抽出」するときに大事になるのが、一見しただけでは同じと見えない要素を共通項として抜き出すことだ。
だからこそ傍目から見ても同じに見えるようなフィードバックを得れるアクションをとっていても、結果としての抽象化のレベルは高くならない。
そういった意味でも、フィードバックに多様性をもたらすためのアクションというのが、具体と抽象の間で成長していくために大事なエッセンスなのだろう

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