【読書メモ】『ファンベース』/ 佐藤尚之

薬事違法ギリギリの誇張表現、過剰に表示され続ける追跡型広告、過剰な露出イラストのバナーなど消費者 / ユーザーに対して真摯に向き合えていないプロモーションが増えている。
こういった本質的ではないプロモーションは、行き過ぎた短期的な利益追求から過剰に注目を集めようとして生まれた産物だ。

本書はこういった中長期的に企業利益を損ねるようなユーザー/消費者へのアプローチに対して警鐘を鳴らしている。
そしてファンに長期間愛されるような王道のアプローチを体系的に教えてくれる。

ファンベース

なぜファンベースの考え方が必要なのか

▼ファンベースが必然な3つの理由
(1)ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれる
(2)時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきた
(3)ファンが新たなファンを作ってくれる

サービス利用率や売上は全体の20%のユーザーによって成り立っている。
そしてコアファンに対して重きを置くことで、彼らが新たなファンを引っ張ってきてくれる。
さらに少子高齢化による新規顧客の低下や製品市場が成熟化していく中で差別化が難しくなるという環境面からも既存のファンを大事にすることを求められている。

※ファンの定義は『企業やブランド、商品が大切にしている”価値”を支持している人』のことだ。

ファンベースのアプローチ手法

ファンベースの取り組みは大きく分けて3つのステップに分かれる。

▼ファンの支持を強くするための3カ条
①その価値自体を、アップさせること
②その価値を、他に代えがたいものにすること
③その価値の提供元の評価・評判を、アップさせること

これらの3つのステップを2つのレベルに分ける。
ファーストレベルがファンの支持を上げる段階で、セカンドレベルがファンをコアファンまで引き上げる段階だ。

ファンベース

①サービス価値自体を向上させるステップ
『共感』
を強くする
A.ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
B.ファンであることに自信を持ってもらう
C.ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する
ーーー
②競合サービスに価値代替されないためのステップ
『愛着』
を強くする
D.商品にストーリーやドラマを纏わせる
E.ファンとの日常的な接点を大切にし、改善するF.ファンが参加できる場を増やし、活気づける
ーーー
③価値提供元の評価&評判を上げるステップ
『信頼』
を強くする
G.それは誠実なやり方か、自分に問いかける
H.本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
I.社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする
このファーストレベルでは『共感』『愛着』『信頼』の3ステップを経てファンの支持を強固にしていく。

そしてファンの基盤をより強化するため、上位20%ののファンからさらに上位20%のファン(全体の上位4%のファン)をコアファンへと引き上げる施策が以下の3つだ。

①サービス価値自体を向上させるステップ
『熱狂』される存在になる
J.大切にしている価値をより前面に出す
K.「身内」として扱い、共に価値を上げていく
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②競合サービスに価値代替されないためのステップ
『無二』の存在になる
L.忘れられない体験や感動を作る
M.コアファンと共創する
ーーー
③価値提供元の評価&評判を上げるアプローチ
『応援』される存在になる
N.人間をもっと見せる。等身大の発信を増やす
O.ソーシャルグッドを追求する。
ファンの役に立つ 

このように3ステップと2つのレベルに分けてアプローチしていくことで、段階的にファンの支持を強固にしていくのである。
『共感』『愛着』『信頼』から『熱狂』『無二』『応援』への転換である。

ファンベースを実施するのに必要な覚悟

このようなファンの支持を得ていく活動をしていくためには、相応の覚悟が必要に感じた。
筆者が指摘する通り、ファンベースを実現するには時間がかかるし、労力がかかる。
それを執行するメンバーはポジティブにとらえてもらいつつ、経営層は業績を一旦凹ませてでもその先を飛躍させる覚悟が必要だ

その覚悟がないと目先の数字に右往左往してしまい、結局ファンに真摯に向き合えなくなる。
というのもこれまでファンベースの活動をしていない企業ほど、目先の売上のためのプロモーションリソースが割かれている可能性が高い。
その投下リソースを中長期のファンベースにさくのであれば、短期的に数字が下がるのは目に見えている。

覚悟が決まってない場合、ファンベースの取り組みはじめた直後の数字低下フェーズで元のプロモーションへのリソース再投下など過去の実績に引きづられた指示出しをはじめてしまう。
これらを避けるために、経営層は覚悟をもってファンと向き合うことを決め、現場の執行メンバーに対しての目標設定や行動指標についても再設計することを求められる。

熱狂的なファンがいるというのは会社全体の意欲も引き上げる。
そのようなサービスを提供できる会社に変容するという強い覚悟を持ってファンベースに取り組むことで大きな果実を得ることができるのだろう。

ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために (ちくま新書)
by 佐藤尚之

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