【シャドバ】史上最悪環境とe-Sportsタイトルのマネタイズ方針について感じていること

本記事ではシャドウバースの第13弾環境を通してe-Sportsタイトルのマネタイズについて考えるという趣旨で書いている。
本論は長くなるが、言いたいことは以下2つに集約される。

  • e-Sportsタイトルを名乗るのであればゲームバランスに紐づくところ以外でマネタイズを強める / もしくはサブスクリプションなどマネタイズモデルを転換していく
  • イベントはソーシャルゲーム的な要素も盛り上げのために大事だが、開発チームや組織のインセンティブ設計を変えていく

2019年はe-Sports元年と呼ばれているが、昨年からの国内のe-Sportsシーンを盛り上げてきた存在としてシャドウバースの存在は大きい。
しかしそのシャドウバースがe-Sportsタイトルとしてオワコン化してしまうことはこれからのe-Sportsシーンに暗い影を落とすことになるだろう。
そうならないためにも、なぜこのようなことになってしまい、どうすればよいのか自分なりに考えてみたいなと思い考えをまとめてみた。

リバース・オブ・グローリーの環境

Shadowverseも第13弾「リバース・オブ・グローリー」環境になって早くも一週間が経つ。
3周年記念ということもあるが、リゼロコラボから過去の人気キャラクターの復刻など、かなり力が入った展開が事前広報されていたため、ユーザーの期待値はかなり高かっただろう。

しかし蓋を開けてみると、あの第5弾「ワンダーランド・ドリームズ 」を彷彿とさせる酷い環境となっている。
ヴァンパイアのクラスコンセプトを崩壊させるような常時復讐スキルを持つセクシーヴァンパイア、そして2マナ進化込みで既存5マナ相当の邪悪な働きをするエイラの登場。
複数のコンセプトデッキが流通し環境メタを読み合うような正常な環境ではなく、極一部の強デッキによって支配された環境になった。

シャドウバースを普通のソーシャルゲームとして捉えるのであれば、新環境によくあるインフレで片付けられる問題だろう。
しかし国内e-Sportsとしてはこれまでない1億円の賞金を排出し、プロリーグまで発足しているe-Sportsタイトルとしてのこの惨状は見過ごせない。

現環境の惨状に不満爆発するユーザーたち

この悲惨な状況に対して、有名配信者もこぞって運営に対してのメッセージを投げかけている。

【緊急会見】ヴァンプ環境にむじょる激怒!緊急ナーフを要求する!【シャドバ/シャドウバース/最強デッキ】
【シャドバ】今の復讐ヴァンプ環境どう思う?緊急能力変更を望む者集え。【シャドウバース/Shadowverse】
今のシャドバやってる奴頭おかしくねえか?【実況】

リリース初期からプレイしていた有名配信者がこぞって現環境に対して不満を爆発させている。
特に3つ目の動画であげている「もこう」さんの発言はかなり共感できる人が多いと思う。

ゲーム性が感じられないんです。今までのシャドウバースでも一強環境っていうのはあったけど、ロイヤルミラーとかある程度実力が出るようなシーンもあった。まだそういうゲーム性はあった。それが急に復讐になったもん勝ちのトランプみたいなゲームになった。おかしいって言っていかないと駄目だ。これは。
(中略)
こんな環境で試合させられるプロも可愛そう。
(中略)
人生かけられない、こんなゲームに。
パチンコの方がまし。ギャンブル以下。ゲーム性が。

なぜこのような環境になってしまったのか

これについては色々な憶測があるかもしれないが、「ゲームバランス」と「マネタイズ」が紐付いてしまっているということが大きな問題なのではないだろうか
なぜそのようなことになってしまったのか考える上では、ソーシャルゲームの文脈から切り離して語ることはできない。

ここ10年の日本のゲームシーンはソーシャルゲームを大きく受けている。
まだガラケー時代、GREE/Mobage全盛期の2010年初頭の怪盗ロワイヤルやドリランドからガチャ文化は盛り上がり、それを継承する形でスマートフォンのマネタイズ文化も発展した。
射幸性を煽るようなガチャ集金に対して不健全さは感じるが、『基本無料』という入り口から今までにないゲームユーザー層の獲得が進んだのは事実である。

シャドウバースはトレーディングカードゲーム(TCG)の裾の尾をソーシャルゲームの切り口で広げたといっても過言ではない。
ポケモンカードや遊戯王、マジックザギャザリングとオフラインのTCGと決定的に違うのは「基本無料」の入り口である。
先行ゲームであったHearthstoneのパクリだと散々言われていたものの、国内マーケットのユーザー動向を見ながらソーシャルゲームライクにTCGを作り上げたCygamesの努力によって今のユーザー人口は成り立っている。

またCygamesが秀逸なのは、神撃のバハムートやグランブルーファンタジーで磨き上げたソーシャルゲーム的な強みをシャドウバースに惜しみなく投下している点だ。
それは別タイトルの美麗イラストや声優を引っ張ってくるだけにとどまらず、有名作品とのコラボレーションなどソーシャルゲーム慣れしたユーザーに必要な運用姿勢までも移植している。

これらのCygamesの企業努力があって、TCGと呼ばれる分野のユーザーの数を広げるに至った。
e-Sportsを広めていく上で必要なのは、その競技人口の多さである。
全体の1%に満たないプロ選手を増やすという話ではなく、ルールをわかって楽しみながら視聴できる99%のユーザーをいかに増やすかということがe-Sportsタイトルの成長のためには不可欠だ。
その99%のユーザーをソーシャルゲームテイストをフックに獲得してきたことこそ、シャドウバースが国内e-Sportsシーンを牽引できたと考える。

しかしソーシャルゲームとは「札束で戦う」と揶揄されたりもするぐらい、お金がゲーム内の強さに関わってくる。
シャドウバースもある程度のデッキを組むぐらいであれば課金は必要ないものの、極めようとするにはそれなりの資金投下が必要となる。
そしてそのカード収集のメインはガチャである。

そして企業側もボランティアやNPOとして組織運営されているわけでもなく、株式会社として株主の期待に応じるような業績を上げなければならないという圧力もあり、ゲーム運営チームにだって課せられている売上目標は低くないはずである。
ここにソーシャルゲーム発e-Sportsのウィークポイントがでてくる。

つまりソーシャルゲーム的なマネタイズを主体にしていれば、より課金するユーザーが「俺強えぇ!」を感じるようなカードを作らなければならない。
しかしe-Sports的なバランスを追求すると、新カードの魅力度は下がり、ガチャの売上は下がるというジレンマにぶつかるのである。

転換期が訪れたシャドウバース

第12弾「鋼鉄の反逆者」 からシャドウバースのコンセプトワードが変更になった。
それまで「本格スマホカードバトル」というコンセプトワードから「本格スマホe-sports」というコンセプトワードでの紹介に変わっている。(動画1:05~)

【Shadowverseシャドウバース】第12弾カードパック「鋼鉄の反逆者(リベリオン)」

これはシャドウバースの軸足やブランドをソーシャルゲームからe-Sportsに明確に切り替えていくという意思表明だと考えた。
しかしその矢先の13弾において、このような環境になってしまったことは残念でならない。

もちろん天下のCygamesが何も手を打ってこなかったわけではない。
ガチャだけでなく不要カードを売却することで得られるゲーム内ポイント(レッドエーテル)で他のカードを手に入れられるようにすることでなるべく不公平をなくした。
またもっているカード資産/カードプールによって実力が左右される環境は、初期ユーザーにとって有利である。
そのため無制限に過去カードを使えるアンリミテッドルールだけでなく、直近5弾のカードパックのみに制限されているローテーションルールを作った。
さらにテンポラリーカードというシステムを使うことで、持っていないカードを一定期間だけ借りられるようなシステムもできた。
またそれだけでなく保有していないカードもプレイできるように2PICKやOpen6など特殊ルールのゲームモードも開発した。

このようになるべく多くのユーザーの期待に添えつつ、e-Sportsとしての公平性を担保しようという気概をCygamesは見せてくれていたと思う
しかしそれでもなお、ソーシャルゲームを基盤とした運営から脱却しない限り、正真正銘のe-Sportsタイトルとしての土台に経つのが難しい局面に入ってきたのではないか、と今回の環境を見て感じさせられた。

e-Sportsタイトルとして大事なこと

では、シャドウバースはどうやったらe-Sportsタイトルとしてまた君臨することができるのか。
色々考えてみたが大きくわけて冒頭に上げた2つの点に集約された。

  • e-Sportsタイトルを名乗るのであればゲームバランスに紐づくところ以外でマネタイズを強める / もしくはサブスクリプションなどマネタイズモデルを転換していく
  • イベントはソーシャルゲーム的な要素も盛り上げのために大事だが、開発チームや組織のインセンティブ設計を変えていく

マネタイズモデルについて

やはりe-Sportsを名乗っていくためには、「札束で殴り合う」ことを煽る方向に持っていかない努力が必要になっていく。
それができないのであれば、やはりソーシャルゲーム止まりになってしまうだろう。
つまり「課金の総金額」が「強さ」もしくは「強さを得るための機会」に直結しないための工夫である。

この辺りのマネタイズがうまくいっているのはe-Sports系のタイトルでもFPSやバトルロワイヤル系ジャンルのゲームタイトルだろう。
FortniteをはじめとしPUBGやApex Legendsなど、彼らはゲーム内で強さに関わるアイテムを販売していない。
代わりにゲームのキャラクタースキンであったり、所謂ゲーム内のファッション/見た目を販売することで「強さ」を売らずにマネタイズしている。
また3ヶ月ごとのゲームシーズンに応じて、バトルパスを販売することでマネタイズだけでなく毎日の継続ログインにつなげる仕組み作りまで作っている。

Fortnite

上記以外について他のマネタイズと併用することでキャラの強さを切り売りしないでマネタイズしていく方向性はあるかもしれない。
例えば、サブスクリプション / 定額制サービスとしての切り口を検討するなどだ。
一定量の金額を支払いすることでローテーションやアンリミテッドのカードが一ヶ月自由に使えるようにすることでインフレしさせないかつ安定的なマネタイズをしていくことはできないか。
ローテーション / アンリミテッドだけでなく、使用できるクラスの数などで従量課金制にするのもありかもしれない。
(これもカードを販売していることなので「強さ」を販売していると見受けられるかもしれないが、まとめて取り扱うことで買い切りのゲームに近いニュアンスを出した方がよいということだ。そうすることで運営上「強いカード」を作り出すことによるマネタイズ動機付けを下げられるのでないか。)

ただし上記方法だけだと、可処分所得が小さい学生ユーザーから多くの不満や離脱を招くことも想定される。
ソーシャルゲームはその性質上、可処分所得が多いけど可処分時間が少ないユーザーが可処分所得が小さいけど可処分時間が多いユーザーの分までお金を支払うことで成り立っていた。
ゲーム運営に対して前者は課金で貢献し、後者はプレイ時間で貢献した。
もちろん強さに依存しない関係で上記のような所得転換ができればe-Sportsとしてのゲーム性を損なうことはない。
そういった意味ではFortniteやApexlegendsでもスキンによって所得転換は行われている。
しかしゲームの「強さ」は販売していないのでそれはゲーム内のバランス調整に影響を与えることはない。

もちろんこの辺りの努力はシャドウバースもしていないわけではない。
有名タイトルとタイアップすることでキャラクタースキンを販売したりしている。
しかし上記のようなゲームでのキャラクター追加やスキン追加のサイクルと比較しても注力度合いは低い。
これはマネタイズの軸足がガチャへの依存から脱却できていないから生じている問題だろう

上記のガチャ依存の問題を解消するために、組織内やチームのビジョンやそれに紐づく目標設定なども変わっていく転換期なのではないだろうか。

開発チームのインセンティブ設計

(僕自身はCygamesの中の人間ではないから、組織内で行われているチーム運営やマネジメントついては聞いたこともないし知らない。ここからは想定の話が多いので妄想話ぐらいに思って読んで欲しい)

先程も書いたが、やはりソーシャルゲームに軸足を置いている以上、e-Sportsゲームにはなりえない。
Shadowverseが本当に「本格スマホカードバトル」から「本格スマホe-sports」に変わるというのであれば、やはり組織のインセンティブ(動機付け)の設計も変えていく段階なのではないだろうか。

先程も書いたが、もちろん株式会社である以上、株主からの圧力は生まれるため収益に対してもストレッチな目標が持たされるだろう。
しかし運営している事業が提供していく価値と顧客が払う対価をどのようにデザインしていくかで組織の運営される方向性も大きく変わってくると思う。

それがソーシャルゲームに軸足がある限り、ARPUやARPPUなど1ユーザーに対しての収益性をどのように向上させていくかという話により過ぎてしまうと思う。
短期的なマネタイズ目標の圧力はゲーム内のバランスに大きく影響する。
もちろん実力反映され過ぎることで「勝てない」ライトユーザーは離反してしまう。
それらを避けるために麻雀の配牌のような一定量のランダム性やユレの担保がゲームの全体感としての調整としては必要になる。
ただし、短期的なマネタイズを目的として、「課金」で買える勝敗のランダム性やユレが実装されたら公平なものとは言えないしe-Sportsとは言えないだろう。

しかしながらソーシャルゲーム的な軸足で短期収益を目指すという目線ではなく、e-Sportsを軸足としたゲームタイトルの提供をしていくという風な目線を持てば、そのもう少し中長期的な視点での事業デザインができるのではないだろうか

目先のトップラインの高さではなく、e-Sports市場を牽引していくために、市場のエコシステムをどうやって健全に立てていくかという観点でゲームデザインをすることが求められるステージに入ってきていると感じる。
そういった観点から運営チームのインセンティブ設計をしていくことができれば、目先の収益を狙ったカードデザインに対して組織内での自浄作用が働き、健全なバランスに収束していくのではないだろうか

最後に

関係者ではないイチ趣味で遊んでいるユーザーが何を偉そうに言っているんだという話はあると思うし、的外れなことや見当違いのことを書いていたらごめんなさい。
でもここまで国内e-Sportsの牽引に寄与してきたCygamesの開発チームへ自分含めてユーザーはめちゃくちゃ期待が大きいと思う。
そしてCygamesへの信頼が厚いからこそ、今回の環境は残念でならないと思った。

以下の記事でも書いたが自分はゲームをしばらく遊ばない期間が長かった。
しかし戻ってきたときにゲーム業界全体が良い方向に動いていることを知ってそこで踏ん張っていた人たちに尊敬の念を持った。

ただソーシャルゲームには落胆させられることもあった。
従来のPCクオリティのオンラインRPGがスマホでできるようになったのに感動したものの、自分自身がソーシャルゲームの射幸性に巻き込まれながら課金したこともあった。
ただやはりそれはゲーム本来の良さを台無しにしていると今でも考えている。

「金で強さを買う」なんてゲームじゃない。
本来のゲームの面白さがでる場所がe-Sportsだ。

そしてそんな中、「ゲームプレイ」をさせてくれる感じがしたのがShadowverseだった。
(もちろんバランスが欠けた環境は今までにもあったけど…)
第一弾からプレイしていたし、ハマり過ぎて会社でShadowverseの布教活動やって勉強会や対戦イベントもやったし、RAGEも出た(結果は出してないけど 笑)。

会社でやってたシャドウバースの勉強会の資料

こうしてシャドウバースにどっぷり浸かったわけだけど、Cygamesだけではなく母体となるサイバーエージェントグループのe-Sports市場での活躍についても着目していた。
なかでもCyberZは広告代理店母体の創業にも関わらず、果敢にチャレンジを続けてゲーム実況や大会配信で使われるOPENRECを磨き上げたし、RAGEでは1億円規模の大会開催まで至った。
(OPENRECの最初期はニコニコ動画のコメントをスタンプにしたようなものでリリースされていた。あそこからスタートして今があるのがすごい…)

こういうのをいちユーザーとして追いながらやっぱり考えることはあった。
それがソーシャルゲームとe-Sportsの相容れない関係性であった。
シャドウバースはそこの隙間をついたからこそ、市場のパイを広げられたと思うし、e-Sportsに良い循環を生み出した。
しかしe-Sportsの業界ステージが変わっていくタイミングだからこそ、より本質的なところを磨いていって欲しいと感じる気持ちが強くなった。

よりよいe-SportsとShadowverseの発展を祈ってます。

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