不確実性の先に安定や安心があるという話

人は安らかでいたいという欲求を強く持っている。
それは安定だったり安心という言葉でも表現される。
マズローの欲求5段階説でも生理的欲求の次に出てくるのが安全的欲求だ。
人の欲求の中でも「安らか」でいることに対する欲求の優先順位はなかなかに高い。

日本人だけを切り取ってみても、その安定や安心への信仰心は根強い。
「大企業神話」だったり「公務員信仰」、さらに「学歴主義」。
これらの根っこに共通するのは「安らかさ」への憧れである。

しかしこの「安らかさ」を”従来の方法”で求めようとすればするほど、失う可能性が高くなってくる時代に突入してきた。
その“従来の方法”とは「変化することがない前提で既存のものにすがりつくこと」である
世の中の動くスピードが遅ければ、未来予測の精度は高い。
そういう見通しがしやすい世界においては現時点で安泰な選択肢を選び続けることが「安らかさ」を得ることへの近道だ。

しかしVUCAワールドと呼ばれるように、現代は恐ろしく未来の見通しが悪い。
※Volatility(不安定性 )、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から現代をVUCAと呼ばれる。
そのような変化度が高い状況下において「安らかさ」を保つためには「変化に対応できるしなやかさ」を持つことだ。
変化しないことやものに依存したり寄生するのを避け、自らが変化に対応していけば生きていけるという心持ちが「安らかさ」を手に入れるということだ。
硬い木でできた割り箸は折りやすいけど、しなやかさを持った竹は曲げても折れにくい。
変化が激しい世の中では「強固さ」のパラメータを上げるよりも「しなやかさ」のパラメータをあげることが処世術としては重要になったきた。

しかし厄介なのことに、この「しなやかさ」のパラメータを上げるためには「不確実性」の中に飛び込んで経験値を上げる必要がある。
つまり「変化」している状況に身を晒し続けた経験値の数でしか「しなやかさ」のパラメーターは伸びない。
ただこの「変化」や「不確実性」に飛び込むためには、向こう見ずな勢いが必要になってくる。
「安定」や「安心」を求める気持ちと相反するような、後先考えないような能天気さが「しなやかさ」を鍛えるために必要になるのだ。

例えるなら「怪我をしないように慎重さ」は「しなやかさ」を鍛える経験を奪うが、「多少の怪我ならなんとかなるからやってみよ」というマインドは「しなやかさ」を鍛える経験を養うのである。

ただこのポジティブさや根明さを養うのは中々に大変である。
だから「しなやかさ」を手に入れるための不確実や変化の海へダイブするための工夫が必要になってくる。
最近大事だなと思ってるのが以下の3つだ。

  • 可能性が高い致命傷以外はリスクを見積もらない
  • 失うものを減らしておく
  • 『自分史上で一番若いタイミングは今』と言い聞かせる

チャレンジを阻害する一番の理由は、勝手にリスクを拡大解釈してしまうことだ。
ここに対して大事なのはリスクの大きさと可能性の両軸で物事を考えることだ。
多くはリスクの「大きさ」ばかりに目がいってしまう。

しかし実際の発生リスクが0.00000001%ぐらいのもの多いし、また巨大なリスクが発生するものは事前に兆候が見られることを加味していないことが多い。
もちろん死んでしまったり、多額の借金を抱える可能性が高いものに賭けるような真似は愚策だ。
しかしリスクの大きさばかりに気を取られると可能性の存在を忘れてしまう。
飛行機事故の可能性を考えれば飛行機に乗れなくなるのと同じだ。
だから可能性が高い致命傷以外のリスクを忘れるのが「変化」や「不確実性」の海に飛び込む際に大事になってくる。

2つ目は、そもそも失うものが少なかったらリスクが大きくならないという話だ。
近年の断捨離ブームの根底にあるものも近いマインドかなと考えてる。
これはお金や高級品だったりそういった物理的側面だけでなく、精神的なものの影響も大きい。
何かを「所有」しているという概念ではなく、「共有」してる「借りている」「また戻ってくる」ぐらいの概念で捉えていくと「失う」という概念自体が減っていく。
しかし元来所有しているという観念は強くなりやすいので意識しないと中々難しい。
だから「所有」していると思ってしまう傾向に陥りやすいということ自体を念頭においておくことが大事になってくるだろう。

3つ目は変化に飛び込もうとした瞬間に戸惑った自分に向けている言葉だ。
「今チャレンジしても遅いな」と思っていても、10年後の自分は「10年前にチャレンジしておけばよかった」と公開するだけなのだ。
いつだってこの一瞬がこれからの人生のシーンで一番若いのだ。
そういうとき感じで奮い立たせることも「変化」や「不確実性」の海に飛び込むためには大事だ。

眼の前で安定している「安らかさ」に対して手を伸ばしたくなるけれど、その欲求に抗いながら「変化し続ける波に乗るしなやかさ」を手に入れることが本質的な「安らかさ」を得るために大事なことなのだ。

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